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勝間和代の親指シフトキーボード

 去年は勝間和代が大ブレイクした1年だった。

 1年の間に、あれだけの本を次々と書く、それだけでもたいへんな能力だと思うが、彼女の知的生産を支えたのは、間違いなく「親指シフト」入力だ。

 親指シフトというのは、パソコンにおける入力方式のひとつで、むかし富士通の「オアシス」というワープロに、その「親指シフト」入力用のキーボードがついていた。

 たいていの人はローマ字入力を使っていると思うが、それだと、ひとつの字を出すのに2から3打しないとならない。JISカナはワンストロークで1文字ではあるものの、キーボード全面に50字が散らばっているために、ほとんどの人は習熟できないでいる。

 その点、親指シフトは、日本語入力を徹底的に考えて作られていて、わずか3段のキーのなかで、非常に効率的に日本語を打ち込むことができる。ワープロの入力コンクールがあった頃には、優勝者はほとんど全員この親指シフトを使っていたものだ。

 勝間氏はこの親指シフトの愛好者。彼女の生産性を支えているのは間違いなく、この親指シフト入力だと断言できる。

 単に入力が速いというだけでなく、とてもリズミカルに、思考を妨げずに打てるのが、親指シフトのよいところ。思考を「妨げない」以上だ。習熟した親指シフターは、紙にペンで書くよりももっと思考のアウトプットが速いはずだ。思考を促進する効果さえ感じられる。脳とパソコンが直結したような感覚、これは親指シフト入力ならではのものといえる。

 しかし残念なことに、本家本元の富士通を含め、いまや親指シフトキーボードの付いたパソコンはほとんど死滅してしまった。リュウドという会社がかつて、ウインドウズで使える親指シフトキーボードを出していたが、いまはやめてしまっているし、ドライバの開発も止まっているから、ビスタ以降では使えない。せっかく秀逸なキーボードなのに。

 本家の富士通は辛うじてキーボードを供給しているようだが、なぜかATOKやウインドウズ標準のIMEでは使えず、オアシス準拠の特殊な日本語変換フソトを要求してくる。1機種しかないノートパソコンも同様だ。

 いまや、パソコン業界では、親指シフトは過去の遺物という扱いであるが、知的生産の道具としては、うち捨てるにはあまりにもったいない、非常に効率的なアイテムなのである。日本で売るパソコンは、デスクトップもノーパソも、親指シフトを標準にしたらよいとさえ思うくらいである。

 いまは勝間氏も、ウインドウズの標準的なキーボードをアクロバット的に用いて親指シフト入力をやりくりしているのが現状だ。彼女あたりが音頭を取って、親指シフトキーボードの大・普及キャンペーンを行なってくれるとよいと、私は願っている。

 今日では、富士通1社を離れて、親指シフトキーボードのコンソーシアムが普及を管理しているので、NECでもソニーでも、親指シフトのパソコンを作ることができる。これだけ「差別化」に汲々としている産業界で、親指シフトに目を付ける会社がいないのは、ほんとうにもったいないことだと思う。

追記:トラックバックをいただきました。ありがとうございます。
    今や、日本語以外にも親指シフトの応用が広がっているようで、「日本のパソコン」だけでなく、国際的な標準規格として親指シフトが登りつめてもよいほどであることは、はじめて知りました。ありがとうございます。

2009/02/19(木) | パソコン類 | トラックバック(1) | コメント(5)

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2009/02/20(金) 14:50:08 | | [ 編集]

宇治大君

『IMEについて』

富士通のNICOLA配列キーボードがJapanistのみ対応となっているのはハードウェア(富士通)の問題ではなく他のIMEがNICOLA配列を全く想定しておらず、採用する気もないのが原因です。
他の企業が一切サポートしておらず、需要も少ない中で富士通は精一杯のサポートをしていると思います。
またJapanistの文節変換指向は、親指の位置に変換/無変換キーがあるNICOLA配列に合わせた仕様なので、親指シフト環境としては標準的な存在と思います。
親指シフトはタッチタイピングを前提とした少し玄人向けの配列なので、完全な標準化は無理があると思います。

2009/02/24(火) 19:52:55 | URL | [ 編集]

遠陬(えんすう)

『Re: IMEについて』

 宇治大君さま。

 情報をありがとうございます。

> 富士通のNICOLA配列キーボードがJapanistのみ対応となっているのはハードウェア(富士通)の問題ではなく他のIMEがNICOLA配列を全く想定しておらず、採用する気もないのが原因です。

 そうなんですか! せめて日本生粋のIMEであるATOKくらいはサポートしてほしいものですね。

 とはいえ、私のリュウド社供給のRbordというキーボード(メカのほとんどは富士通のもののようです)は、なぜATOKで使えているのでしょうか?

 あと、もし宜しかったら教えていただきたいのですが、何かおかしなことをしているわけではないと思うのですが、だんだん不具合が増えているんです。たとえば今は、最上段の数字を打つと、出る文字がおかしくなっています。数ヶ月前まではそんなことはなかったのですが・・・。数字が大丈夫だったころでも、「つ/ま」のキーの右のキー等、いくつかの特定のキーを打つとアルファベットのモードに変わってしまうという不具合はありました。

> またJapanistの文節変換指向は、親指の位置に変換/無変換キーがあるNICOLA配列に合わせた仕様なので、親指シフト環境としては標準的な存在と思います。

 そうですか・・・・。となると、やはり一度は使ってみないことには、良し悪しは分かりませんね。

> 親指シフトはタッチタイピングを前提とした少し玄人向けの配列なので、完全な標準化は無理があると思います。

 たしかに、ローマ字だと、キーを見ながらポチポチっていう人も多々おられますね。
 でも、タッチタイピングって、練習すれば誰でも半月くらいで身に付くそうですから、やってみる価値は大いにあるんですけどねぇ。やれない人にしてみれば、そんなにカンタンに身に付くなんて想像も付かない、っていうことでしょうか。もし親指シフトを普及させようとするなら、優秀な独習ソフトも一緒に添付しないとダメですね。

2009/02/25(水) 00:13:39 | URL | [ 編集]

宇治大君

『No title』

当方のキーボードはOASYSキーボードFMV-KB611ですが、MS-IME2007でも親指シフトとして動作しています。
これはFMV-KB611用キーボードドライバを入れているからなのかと想像しています。
ドライバやエミュレータによって親指シフト動作をしてくれるものとかあるのだと思いますが、完全に動作してくれることが期待できるのはJapanist付属のドライバのように動作確認がとれているものだけなのでしょう。
不具合の原因究明が面倒な場合は動作保証のある純正品が無難になるので、その意味でも玄人向けかと思います。

日本生粋のIMEはJapanistのみであると思います。
親指シフトという日本語入力専用のキーボードで日本語の文章を作成するために開発されたIMEはJapanistだけであり、ATOKは英字配列キーボードを使うことを想定した昔の時代の仕様のIMEです。
日本語入力環境はワープロによって開拓され、そこから発展したのかJapanistであり、PCは英字入力中心だった時代を引きずったIMEがATOKなので、ATOKと親指シフトとは方向性が違うものと思います。

親指シフト導入の是非については私のブログで最近意見を載せました。
日本語の文章を多く入力しない人には配列の違いはあまり気にならないものです。
それでも興味のある人には親指シフト(NICOLA配列)をぜひ試してみて少しでもユーザーが増えてほしいものです。

2009/02/25(水) 20:58:21 | URL | [ 編集]

azuki

『Re: IMEについて』

はじめまして。

scim-anthyはNICOLA入力を標準でサポートしていますよ。

一応,ご参考までに。

2009/02/28(土) 19:32:55 | URL | [ 編集]

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Re: 勝間和代の親指シフトキーボード(@月刊冷蔵庫 又は 遠陬(えんすう)のほどほどのこだわり)

親指シフトの普及のために。http://hodohodoensu.blog86.

2009/02/20(金) 00:10:14 | 親指シフトウォッチ

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