多くの場合、いわゆる「いい会社」に入るために「いい大学」に入ろうとするわけだが、そのような目的のために、どう「いい大学」を選ぶか、ということになってくる。
念のために言うが、私は、ちまたでいうところの「いい会社」に入るのが必ずしも良い選択とは思えない。トヨタやソニーに入って同期ウン百人と競争するよりも、「将来ソニーやトヨタみたいになる会社」に入って社長に登りつめる方が「おいしい」のは目に見えているし、第一、ソニーやトヨタのような大企業が「安泰」ではないことは、もはや誰の目にもあきらかからだだ。とはいえ、そこらへんの話になると、本欄にはいささか手に余る壮大なテーマとなってしまうので、とりあえずここでは、いわゆる「いい会社」に入るという目的を肯定した上で、そのためにどう「お買い得」な大学選びをするか、ということに話を限定しようと思う。
お買い得、ということは、言い換えれば「安くていいものが買える」ということである。
受験生にとって「支払う」ものは自分の成績、と考えれば、難易度がより低くて就職により有利な大学を選ぶ、と言い換えることもできるだろう。
黙っていても東大・京大クラスの大学に入れる人の場合、すなおに東大にでも入っておけばそれでよい。問題は、そこまでいかないレベルの場合である。
多くの「いい会社」が東京に本社を置いているため、いい会社に「近づく」ためには、東京の大学に行けばよいと、考えるのはある意味自然なことだ。だが、ほんとうにそれでいいのか。具体的に言えば、東京で中堅どころの大学に入るのと、地方のトップクラスに入るのとでは、やはり東京へ出た方がいいのか。
そのほうがいいと考える人がいるからこそ、現在の偏差値水準が成立しているのではあるが、こと「いい会社」へ入る、という「目的」を前提で考えるなら、それは必ずしも賢い戦略ではない。
大企業の場合、全国から「バランス良く」新卒を採用しようとするため、地方の大学に籍を置いていることがそのまま不利になるわけではない。いやむしろ、「同レベル」であれば、地方に分のある場合もあるのだ。
たとえば、いわゆる「いい大学」の下限といっては失礼だが、旧帝大で1番難易度が低い北大のことを考えてみよう。北大と、同レベルの東京の私大あるいは国公立だとどちらが有利か。
これは言を待たず北大である。
北海道地区から人を取ろうとしたとき、競合する大学は、せいぜい小樽商科大学(と、しいて加えれば数校の工業大学系のところ)くらいになるだろう。学内で競合しない限り、そして本人の実力に相当の問題がないかぎり、ほとんどどこでも、希望した会社に入れる、と言ってもよいくらいである。
しかし、同レベルの東京の大学の場合、自分のところと同等以上のところに、いったい何校ひしめいているだろうか。ちょっと考えただけでも、これはかなりタフな闘いになるのは目に見えている。
実際、入試偏差値でははるか上のレベルの大学を制して、次々と北大生が内定を決めていくのを、「なぜだ?!」と叫びながら横で見ている在京大学生は少なくないようだが、ちょっと考えればこんなことはすぐにわかること。逆にいえば、そこまで頭が回らなかった「罰」を、いま受けているのだと言うこともできるだろう。
念のために言うが、わたしは在京の諸大学を貶めるためにこんなことを書いているのではない。それぞれの大学の持つ、輝かしい歴史や伝統、あるいは教育内容について、いささかもその価値を否定するものではない。しかし、こと「いい会社に入る」という「目的」を前提として「賢い買い物をする」という視点に立つならば、このようなことが言える、と、言っているだけである。さらに、すでに述べたように、いわゆる「いい会社」にはいるという目標の立て方自体にも、決して賛成しているわけではない。(たぶん、これからの人生行路でいちばん「有利」な選択は農家になることだろうと私は思っているのだが、そのことは欄を改めて書くことにしたいと思う)。しかし、多くの人は、「いい会社」に入るためと称して厳しい受験戦争を幼い時から闘ってきているのに、肝心の大学選びで考え方を間違えるのはもったいないと思うわけである。
ちなみに・・・・・。
さきほど話に出た小樽商科大学である。
一般にはあまり有名とも言えないし(しかし無名とまでは言えない微妙な立ち位置にある)、入試偏差値もいわゆる旧帝大クラスよりはずっと低いわけだが、こと「いい会社」に入る、という目的からすると、かなり「おいしい」大学のひとつである。
小樽商大は、その出自についていえば、一橋大や神戸大とともに旧制の高等商科専門学校である。旧帝大を御三家とすれば、いわば「御三郷」にあたる由緒正しき家柄なのだ。
戦後、総合大学への道を歩んだ一橋や神戸と違って、単科大学として歩んできた地味さもあってあまり注目されないが、その格式の高さから、「いい会社」の「エライ人」には、ここを出た人も少なくない。そのような引きもあって、就職状況は悪くない。悪くないというか、入試偏差値を考えたら奇跡のようなものである。旧帝大クラスには届かないが、このレベルなら入れる、という人の場合、真剣に考慮するに値する大学といえるだろう。
あと、ちなみに老婆心ながら。
女子の場合、東京に出る別のリスクは、いざ就職になると「採用は自宅生のみ」なんて言いだす会社がまだある、ということだ。多くの女子学生は「そんなこと今さら言われても」となるわけだが、それを言うなら、入学前にそのくらいのことは調べておかないと、ということにもなる。4、5年後にも、そんなことを言う会社があるかどうかは分からないが、保守的な会社だと、明言していなくてもそんな観点で採用選考をされるという可能性は頭に置いておいた方がいいだろう。そしてあなたが考える「いい会社」は、きっとえてして保守的だろうと思う。
こんなことを書くと、「ずるーい、東京の奴らだけ有利ぃ」なんて思うかもしれないが、冒頭から書いているように、必ずしも東京の大学にいくほうが有利というわけではないのだから、いちがいにどっちが有利なのかはわからない。たぶん1番おいしい思いをするのは、札幌や小樽に住んでいる女子学生だろう。
念のために言うが、私は、ちまたでいうところの「いい会社」に入るのが必ずしも良い選択とは思えない。トヨタやソニーに入って同期ウン百人と競争するよりも、「将来ソニーやトヨタみたいになる会社」に入って社長に登りつめる方が「おいしい」のは目に見えているし、第一、ソニーやトヨタのような大企業が「安泰」ではないことは、もはや誰の目にもあきらかからだだ。とはいえ、そこらへんの話になると、本欄にはいささか手に余る壮大なテーマとなってしまうので、とりあえずここでは、いわゆる「いい会社」に入るという目的を肯定した上で、そのためにどう「お買い得」な大学選びをするか、ということに話を限定しようと思う。
お買い得、ということは、言い換えれば「安くていいものが買える」ということである。
受験生にとって「支払う」ものは自分の成績、と考えれば、難易度がより低くて就職により有利な大学を選ぶ、と言い換えることもできるだろう。
黙っていても東大・京大クラスの大学に入れる人の場合、すなおに東大にでも入っておけばそれでよい。問題は、そこまでいかないレベルの場合である。
多くの「いい会社」が東京に本社を置いているため、いい会社に「近づく」ためには、東京の大学に行けばよいと、考えるのはある意味自然なことだ。だが、ほんとうにそれでいいのか。具体的に言えば、東京で中堅どころの大学に入るのと、地方のトップクラスに入るのとでは、やはり東京へ出た方がいいのか。
そのほうがいいと考える人がいるからこそ、現在の偏差値水準が成立しているのではあるが、こと「いい会社」へ入る、という「目的」を前提で考えるなら、それは必ずしも賢い戦略ではない。
大企業の場合、全国から「バランス良く」新卒を採用しようとするため、地方の大学に籍を置いていることがそのまま不利になるわけではない。いやむしろ、「同レベル」であれば、地方に分のある場合もあるのだ。
たとえば、いわゆる「いい大学」の下限といっては失礼だが、旧帝大で1番難易度が低い北大のことを考えてみよう。北大と、同レベルの東京の私大あるいは国公立だとどちらが有利か。
これは言を待たず北大である。
北海道地区から人を取ろうとしたとき、競合する大学は、せいぜい小樽商科大学(と、しいて加えれば数校の工業大学系のところ)くらいになるだろう。学内で競合しない限り、そして本人の実力に相当の問題がないかぎり、ほとんどどこでも、希望した会社に入れる、と言ってもよいくらいである。
しかし、同レベルの東京の大学の場合、自分のところと同等以上のところに、いったい何校ひしめいているだろうか。ちょっと考えただけでも、これはかなりタフな闘いになるのは目に見えている。
実際、入試偏差値でははるか上のレベルの大学を制して、次々と北大生が内定を決めていくのを、「なぜだ?!」と叫びながら横で見ている在京大学生は少なくないようだが、ちょっと考えればこんなことはすぐにわかること。逆にいえば、そこまで頭が回らなかった「罰」を、いま受けているのだと言うこともできるだろう。
念のために言うが、わたしは在京の諸大学を貶めるためにこんなことを書いているのではない。それぞれの大学の持つ、輝かしい歴史や伝統、あるいは教育内容について、いささかもその価値を否定するものではない。しかし、こと「いい会社に入る」という「目的」を前提として「賢い買い物をする」という視点に立つならば、このようなことが言える、と、言っているだけである。さらに、すでに述べたように、いわゆる「いい会社」にはいるという目標の立て方自体にも、決して賛成しているわけではない。(たぶん、これからの人生行路でいちばん「有利」な選択は農家になることだろうと私は思っているのだが、そのことは欄を改めて書くことにしたいと思う)。しかし、多くの人は、「いい会社」に入るためと称して厳しい受験戦争を幼い時から闘ってきているのに、肝心の大学選びで考え方を間違えるのはもったいないと思うわけである。
ちなみに・・・・・。
さきほど話に出た小樽商科大学である。
一般にはあまり有名とも言えないし(しかし無名とまでは言えない微妙な立ち位置にある)、入試偏差値もいわゆる旧帝大クラスよりはずっと低いわけだが、こと「いい会社」に入る、という目的からすると、かなり「おいしい」大学のひとつである。
小樽商大は、その出自についていえば、一橋大や神戸大とともに旧制の高等商科専門学校である。旧帝大を御三家とすれば、いわば「御三郷」にあたる由緒正しき家柄なのだ。
戦後、総合大学への道を歩んだ一橋や神戸と違って、単科大学として歩んできた地味さもあってあまり注目されないが、その格式の高さから、「いい会社」の「エライ人」には、ここを出た人も少なくない。そのような引きもあって、就職状況は悪くない。悪くないというか、入試偏差値を考えたら奇跡のようなものである。旧帝大クラスには届かないが、このレベルなら入れる、という人の場合、真剣に考慮するに値する大学といえるだろう。
あと、ちなみに老婆心ながら。
女子の場合、東京に出る別のリスクは、いざ就職になると「採用は自宅生のみ」なんて言いだす会社がまだある、ということだ。多くの女子学生は「そんなこと今さら言われても」となるわけだが、それを言うなら、入学前にそのくらいのことは調べておかないと、ということにもなる。4、5年後にも、そんなことを言う会社があるかどうかは分からないが、保守的な会社だと、明言していなくてもそんな観点で採用選考をされるという可能性は頭に置いておいた方がいいだろう。そしてあなたが考える「いい会社」は、きっとえてして保守的だろうと思う。
こんなことを書くと、「ずるーい、東京の奴らだけ有利ぃ」なんて思うかもしれないが、冒頭から書いているように、必ずしも東京の大学にいくほうが有利というわけではないのだから、いちがいにどっちが有利なのかはわからない。たぶん1番おいしい思いをするのは、札幌や小樽に住んでいる女子学生だろう。
2009/02/09(月) | 大学・進学 | トラックバック(0) | コメント(0)